1・弄ばれる身体

(危険なエロ 10のお題より)





 一番、興が乗るのは、しろい肌を存分に味わっているとき。
「・・・バージル。くすぐたいって」
 子どものイタズラをたしなめるかのような口調で、笑う。
 唇で、耳の後ろから喉仏にかけてのラインをなぞると、ダンテは「たまらない」とばかりに首を左右に振る。
 それは、イタズラ心を煽るだけ。
 今度はやや大胆に、唇で音を立てながら、首筋を攻める。
「・・・どうせ舐めるなら、もっとイイところにしろよ」
「先ほど、存分にかわいがってやったはずだが?」
「かわいがる? あれがそんな生やさしいもんか・・・んッ、あぁッ」
 反駁を押さえつけるように、音を立てて吸い上げると、薄い花びらが一つ咲く。
 白い肌は、格好のキャンバスだ。
 首筋だけで我慢できるはずもなく、胸に移動する。それから、脚を持ち上げて、やわらかい内股へ。
 もちろん、たった今まで俺を受け入れていた部分へのいたわりのキスも忘れない。
「アンタのそういうところ・・・」
 ふいに、上から声が落ちてきた。
 同時に、髪をなでられる感触。 
「嫌いじゃない」
 ふいに重なった視線が、幾重にも絡まる。
 とたんに、感情の奔流が、せきを切った。
「うっ・・・歯、立てんなって!」
「・・・我慢しろ」
「ちょ、それどういうこ・・・あ!ンッ」
 テーブルマナーも忘れて、皿を舐めるようにダンテを賞味する。
 先ほど体中を駆け抜けたルートをもう一周。
 歯を立てられるたびに、全身を細かく震わせ、両隣三軒にまで響く声で鳴いた。
「バージル・・・。アンタ、すげー・・・やらしい顔してる」
 答える余裕などない。 
 ほのかに上気した肌は、今まで食べたどの高級料理よりも、極上の味だったから。
 ダンテの息に甘いかおりが混じるころ。肌には、薄い花びらがすっかり敷き詰められていた。
 ようやく人心地がついた。
 今度は、身体を起こして、作品を心ゆくまで観察する。
 眼下には、だらり、と腕を両脇に投げ出し、胸を激しく上下させてあえぐ男。
 その瞳は欲が浮かび、唇からは快楽の吐息がこぼれている。雪よりも白く輝く肌には、赤い所有の刻印。
「いい眺めだ」 
「マニアックな趣味だ」
 憎まれ口だが、声は濡れそぼっていた。




***



「アンタ・・・オレに跡残すの好きだよな」
 情事の後のけだるい雰囲気の中、ダンテはなんとはなしに呟いた。
「そうか?」
 指を持ち上げて、肌に咲いた花びらを、なぞる。
 惜しむらくは、悪魔の血のせいで治癒が早いということだ。 
 あれほどきつく付けた跡も、だいぶ色が薄くなっている。
「今だってほら・・・」
 ダンテはくぐもった声を上げた。
 自らの指先で、ついっとなぞったのは、一つになった部分。
「そろそろ抜いてくんねーと、後が辛いんだけど?」
「それは失礼」
 といいながらも、ぬくぬくとダンテの中のあたたかさを堪能する。
 できるなら、このまま一つでいたい。
 ダンテの肌に跡を残したままでいられるのならば、永遠に残しておきたいのだ。
「バージル」
 困ったような、それでいて、少し照れたような声。
「・・・大丈夫だって」
「なにが・・・だ」
 上手く言葉がでてこなかった。
 ダンテはそっと腕を持ち上げると、髪をそっと撫でてくれた。
「もう・・・あんなことは起こらねぇ」
 日の光の下では、ほとんどみれない悲哀のこもった青。
 それは幼い日の悲劇。
 何の前触れもなく、母と弟を突然奪われた。
 おそらく俺とダンテが肌を合わせる理由は、愛情だけではない。
 あの日の悲しみを分け合うため。失ったぬくもりを埋めるため。
「不安にならなくても・・・」
 これは俺のものだと示さなくては、暗く、重たいものに押しつぶされてしまいそうだから。
 俺の髪を撫でていたダンテの指が、ぱたり、とシーツの上に落ちた。
 顔をのぞきこむと、静かな色を浮かべた青の海の中から、情欲の炎が見え隠れしている。
 切ない吐息とともに、ダンテが呟く。
「こんなに深くつながってるじゃねーか」
 ココロもカラダも。
 互いに入れ込んでいるのは、ダンテも一緒。独占欲で、どうになかってしまいそうな気持ちですら共有しているらしい。
「それにさ」
 喉を鳴らして、にんまりと微笑んだ。
「オレとアンタがいれば、最強だろう?」
 自分がこの男を、求めてやまないの理由を実感する瞬間。
 つられて、口角がつりあがった。
「・・・そうだな」  
 腰をゆるりと動かしはじめる。
「ちょっと待て、・・・ナニ元気になってんの?」
 中身を穿つモノの大きさにダンテは、うわづった声を上げた。
「無理だって、こんなになって・・・ンッーーあッ」
「言い出したのは、お前だ」
 その断言の意味を考える額に、軽く唇を押し当てて、ささやく。
「俺たちがそろえば最強なんだろう?」
 にやり、と笑いかけると、ダンテは諦めたかのように首を左右に振った。
 肌に散らした桜の花は、すっかり散ってしまった。
 だが、そんなことは構わない。
 何度でも割かせればいいだけ。
 可能だろう。
 ダンテとならば。






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<あとがき>
・「普段、まじめな顔しか見せないバージル兄さんのEROI顔ってのは、どんな顔なんでしょうかね?」という疑問から書いてみました(笑)
・アニキの顔の描写をもっとすればよかったなぁ、とちょっと反省。
・しかし、ワタクシ、アニキの乱れた顔が非常に大好きみたいですね。もしくはいやがりながら乱れる話を書きたい(というか読みたい OR 見たい)むっつりですから(笑)

■お題はお題場さまからお借りしました

 
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