(4月2日更新)  
             
             
             
             
            Sabbat  -----------------
 
             
             
             
            「・・・テ」 
             
            閻魔刀を、だらりと下げたままバージルが空を仰いだ。 
            赤い月と、黒い空。 
            地面を埋め尽くしているのは、屍の山。 
            オレたちに出くわしちまった運のない悪魔の末路だ。 
             
            今日の悪魔狩りは、何時間だったのか。 
            斬っても、撃っても、次から次へと沸いてきた。 
            時間の感覚なんか、とっくにぶっ飛んじまった。 
             
            残ったのは、疲労で痺れた腕と、オレを呼ぶバージルの声だけ。 
             
            「ダンテ」 
            ぴくりとも動かない青い背中から、焦れたような声があがった。 
             
            「分かってる」 
            音もなく、背後に忍び寄る。 
            力まかせに抱きしめると、詰まったような息が吐き出された。 
             
            「・・・早く、しろ」 
            「随分と余裕がねぇな」 
            「お前も・・・だろ」 
             
            言葉が途切れる前に、互いの唇に噛みついた。 
            腰に腕を回すと、やつの腕が首に絡まってきた。 
            先制攻撃、とばかりに頬を両手でつかまれ、舌を差し込まれる。 
             
            「・・・ぁ、ン、ぁぁ、はッ」 
             
            オレよりも厚みのないソレは、戦いで火照った身体には格別の味だ。 
            音を立てながら貪り、息ができないほど吸い上げてやる。 
            だが、鼻先で笑われる。 
             
            ――まだまだ、お前は生ぬるい。 
            「お手本」を返される。 
             
            ――ハッ! そのわりには、エロい声が出てるぜ? 
            のけぞった顎に、キスを落とす。 
             
            さて、今日はどっちが可愛がられるんだ? 
             
             
             
             
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            クレイジーな狩りの後。 
            半分の血が、沸騰する。 
             
             
            悪魔を狩るために開放した力を、制御しきれなくなる。 
            ヒトの器の中から、悪魔が出口を求めて暴れまわる。 
             
             
            やんちゃなコイツを抑えるには、理性なんてやわらかいモノは、役に立たない。 
             
            伝説の魔剣士の遺産ってのも、考えものだ。 
            この力を抑えることなんてできやしない。 
             
            ならば、解放するまでだ。 
             
            悪魔どもの死体の真ん中で、実の兄貴と。 
            我ながら、いい趣味だ。 
             
            「まだ、イくなよ?」 
             
            コートの前をはだけ、浅い息を吐く男にささやく。 
            青と白の布地の間から、素肌をなで上げた。 
            それだけのことで、撃ち抜かれたウサギみたいな悲鳴があがる。だらしなく開いた唇に指をあて、やり過ごそうとする。 
             
            むき出しになった首筋は、あまりに無防備で、食いちぎってやりたくなるほど、いやらしい。 
             
            だが、それと反比例するかのような、鋭い眼光。 
             
            「最高だぜ、オニイチャン」 
            「おまえこそ」 
            「・・・おいっ」 
             
            臨戦態勢になっているモノに、バージルの膝頭が押しつけられる。 
             
            「・・・煽るなよ。辛いのアンタだぜ?」 
             
             
            肩をあえがせながら睨みつけると、バージルは意地悪く笑った。 
             
             
            「いつお前に上を譲るといった?」
 
             
            地面に押し倒して、唇にかじりついたのは、どちらなのか。 
             
             
            赤い月と、黒い空。 
            狂宴は、これからだ。 
             
             
             
             
             
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