(4月2日更新)




Sabbat  -----------------



「・・・テ」

閻魔刀を、だらりと下げたままバージルが空を仰いだ。
赤い月と、黒い空。
地面を埋め尽くしているのは、屍の山。
オレたちに出くわしちまった運のない悪魔の末路だ。

今日の悪魔狩りは、何時間だったのか。
斬っても、撃っても、次から次へと沸いてきた。
時間の感覚なんか、とっくにぶっ飛んじまった。

残ったのは、疲労で痺れた腕と、オレを呼ぶバージルの声だけ。

「ダンテ」
ぴくりとも動かない青い背中から、焦れたような声があがった。

「分かってる」
音もなく、背後に忍び寄る。
力まかせに抱きしめると、詰まったような息が吐き出された。

「・・・早く、しろ」
「随分と余裕がねぇな」
「お前も・・・だろ」

言葉が途切れる前に、互いの唇に噛みついた。
腰に腕を回すと、やつの腕が首に絡まってきた。
先制攻撃、とばかりに頬を両手でつかまれ、舌を差し込まれる。

「・・・ぁ、ン、ぁぁ、はッ」

オレよりも厚みのないソレは、戦いで火照った身体には格別の味だ。
音を立てながら貪り、息ができないほど吸い上げてやる。
だが、鼻先で笑われる。

――まだまだ、お前は生ぬるい。
「お手本」を返される。

――ハッ! そのわりには、エロい声が出てるぜ?
のけぞった顎に、キスを落とす。

さて、今日はどっちが可愛がられるんだ?




***





クレイジーな狩りの後。
半分の血が、沸騰する。


悪魔を狩るために開放した力を、制御しきれなくなる。
ヒトの器の中から、悪魔が出口を求めて暴れまわる。


やんちゃなコイツを抑えるには、理性なんてやわらかいモノは、役に立たない。

伝説の魔剣士の遺産ってのも、考えものだ。
この力を抑えることなんてできやしない。

ならば、解放するまでだ。

悪魔どもの死体の真ん中で、実の兄貴と。
我ながら、いい趣味だ。

「まだ、イくなよ?」

コートの前をはだけ、浅い息を吐く男にささやく。
青と白の布地の間から、素肌をなで上げた。
それだけのことで、撃ち抜かれたウサギみたいな悲鳴があがる。だらしなく開いた唇に指をあて、やり過ごそうとする。

むき出しになった首筋は、あまりに無防備で、食いちぎってやりたくなるほど、いやらしい。

だが、それと反比例するかのような、鋭い眼光。

「最高だぜ、オニイチャン」
「おまえこそ」
「・・・おいっ」

臨戦態勢になっているモノに、バージルの膝頭が押しつけられる。

「・・・煽るなよ。辛いのアンタだぜ?」


肩をあえがせながら睨みつけると、バージルは意地悪く笑った。


「いつお前に上を譲るといった?」

地面に押し倒して、唇にかじりついたのは、どちらなのか。


赤い月と、黒い空。
狂宴は、これからだ。





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